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「使える記憶」とは何か

使える記憶・使えない記憶

 実際の入試では当然のことながら、問題だけを見せられて解答しなくてはなりません。 解答を見て「あ、そうだそうだ。これ勉強したのにぃ」と嘆いても後の祭りです。 問題だけを見て思い出せない記憶は受験に役立ちません。 解答を見てやっと思い出せる記憶は使えない記憶です。 それゆえ、問題だけで思い出せる記憶、すなわち使える記憶を増やす努力が必要なのです。 ちなみに認知心理学の用語を使えば、「使えない記憶」は再認可能な記憶、 「使える記憶」は再生可能な記憶といえます。
 もちろん、試験には制限時間があります。いくら思い出せる記憶を増やしても、 それを時間内にアウトプットできなければ、点数には還元されません。 使える記憶を、いかに問題のフォーマットに合わせて、素早くアウトプットするか。 入試を勝ち抜くには、この技術を身につけることが最も重要なのです。

「知っているか、知らないか」

 よく高校教師も予備校の講師も、 「君たち、これくらい勉強してるんだから知ってて当たり前でしょ」と言わんばかりに 「問題集は『考えて』解くもの」ということを頭ごなしに押しつけてきます。 ここには「受験生はこれくらい知ってて当たり前」 「問題集は実力があれば解けて当たり前」などという大きな誤解が存在します。 受験生にとっては大学入試に必要な知識など知らないことだらけです。 そして知らないものから知っているものは生み出せません。無から有は生まれません。 大学入試の知識は「知っているか、知らないか」でほぼはっきりと二分できます。 とにかく、必要な知識を知らなければいかなる問題も解けません。
 また、もっと厄介な言葉は「考える」という言葉です。 この「考える」という言葉が、「『使える記憶』から問題に必要な知識を引っ張ってくる」 という意味と「知らないものを知っているものに転化する」 という意味とをごちゃごちゃにして使われている場合がよくあります。 前者は当然ながら、大学受験に必須の力ですが、さきほど指摘したように、 後者の意味は、むしろ大学受験では時間の浪費という害にさえなります。
 このページでは、この誤解を避けるために「考える」という言葉を一切使いません。 また、「考える」という言葉が大学受験の文脈で出てきた時は、その意味について見極める必要があります。

「宣言型知識」と「手続き型知識」

 認知心理学の用語を用いれば、「知っているか、知らないか」という具体的な"What"の知識は 「宣言型知識」、「どのように解答を導き出すか」という抽象的な"How"の知識は 「手続き型知識」と呼ばれます。
 これを踏まえて、大学入試の知識の形を分類すると

知識重視型
歴史事項や年号、沈殿の色といったいわゆる「暗記物」
抽象的手続き重視型
数学や物理のように、解答の流れをほとんど自力で組み立てる必要のあるもの
具体的手続き重視型
英語長文や現代文・古文・漢文の読解のように、与えられた「文脈」を解析するもの

となります。「知識重視型」は宣言型知識、「抽象的手続き重視型」と「具体的手続き重視型」 は手続き型知識の形として扱うことが可能でしょう。 この辺は多少個人差もあると思いますので、どのように記憶したら自分にとっては覚えやすいのかを つねに意識しながら勉強するとよいでしょう。

つながりを「身体に覚えさせる」

 小・中学生くらいまでは丸暗記を得意になってやっても割と覚えていられるものですが、 高校生以上になると何か手がかりが存在しないとすぐに忘れてしまいます。 とかく「知識重視型」の知識は単なる丸暗記に陥りやすいので、知識同士を関連づけて, 試験本番で思い出せるような工夫が必要です。具体的な方法は「学習能力の上げ方」で述べます。
 最初から抽象的なつながりとして存在する手続き型知識というのは、 宣言型知識とは違いなかなか手がかりが作りづらいです。 それゆえ、時間をかけて何度も繰り返すことを強く意識しなくてはなりません。 特に数学や物理は、解答の流れを自力で組み立てなくてはならない点で習得が大変ですので、 なおのこと繰り返しに重点を置いて勉強を進める必要があります。
 こうして、個々の事項の間のつながりを「身体に覚えさせる」という感覚で記憶しましょう。

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